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2022/6/17 日光2 刈込湖/湯元温泉
1)日光山旅2日目は、刈込湖です。奥日光の一番奥の湯元温泉のさらに奥にある湖です。朝7時50分、日光駅前のホテルからバスに乗り1時間20分。湯元温泉からの周回ルートで6時間余り、4時間の地点でバスも拾えるので余裕を持った山行ができます。もともと雨を想定していたので、途中で宿泊地の湯元温泉に引き返せること、もともとこのルートは"山頂"がなく展望は望めないので天気が悪くても後悔がないこ、が選択の理由でした。意外に晴れ間も出るまあまあの天気だったのでルートを変えようかとも思ったのですが、良い方に変わったわけなのでよしとしました。行ってみて知ったのは、この一帯の森林が素晴らしかったこと。ちょうど、山地帯から亜高山帯へと植生が変化する様子がよく判ったのでした。出発の湯元温泉の標高は1,480mで、もっとも高いところが1,730m。つまり大して登らないのですが、この地域の山地帯と亜高山帯の境界がちょうど1600mなので植生の変化がよくわかるのです。写真がだいたい標高1600mあたり。ミズナラなどの広葉樹林とヒノキみたいな針葉樹が混ざっています。
2)まず、野草の花から紹介しましょう。それまで地面に咲いていたのは、シロハナノヘビイチゴやタチツボスミレが多かったのですが、このあたりから、見知らぬ野草がみられるようになりました。この花は沢山咲いていました。なかなか可愛い花です。
3)これは、ズダヤクシュ。ユキノシタ科ズダヤクシュ属。ズダヤクシュ属は日本ではこの1種のみ。亜高山帯の針葉樹林帯に多い花だと言います。漢字で書くと喘息薬種。長野県の方言で喘息のことをズダといい、この草が薬用になるといいいます。そのままの名前ですね。山の人には身近な花だったんでしょうね。私にとっては珍しいので、写真を撮るのに夢中になってしまいました。
4)ズダヤクシュの花のアップ。小さい花ですが、よく見ると可愛いです。針状のが花弁で、雄しべも突き出ています。(2022/7/2)→ズダヤクシュ
5) 刈込湖の森の野草の花は、次から次へと見知らぬ花が出てきて、そのたびに立ち止まってしまうので、なかなか先に進めません。この森の野草はどうも一定の棲み分けが出来ているようでした。決して標高だけで棲み分けているようではなさそうでしたが、標高の低い順(出てきた順)に紹介しましょう。まず、標高の低い(1400m1600m)あたり。こんな感じで、山地帯と亜高山帯の中間ですね。
6)このあたれはスミレが多かったです。ほとんどがタチツボスミレみたいだったのですが、細部を調べるとどうも違うようでした。だいたい6月中旬ですからタチツボスミレにしては時期が遅すぎです。しかしご承知のようにこの仲間は同定が非常に難しい。未だ判明できません。代わりにこちらのスミレを紹介します。ニョイスミレです。一株だけ咲いていました。 
7)先ほどの刈込湖の森のニョイスミレは、形が変形しているし、そもそも下を向いているので、足場が悪い山では写しずらくあれ以上は諦めたのですが、翌日の小田代原(草原です)でニョイスミレを見つけたのでそのその写真です。これでも地面に這い蹲って写しています。調べてみると、ニョイスミレは(というかスミレは一般に)草地でも山の中でもどこでもみられるので、森の中にも草原にも咲いていたんですね(両方に咲いていたのはこれだけでした)。そして、ニョイスミレはスミレの中で最も花期が遅いそうです。ということは、刈込湖の森のタチツボスミレに似たスミレは何だったのだろう。謎が深まります。(2022/7/3)  →ニョイスミレ
8)だんだん登って、うっそうと茂る針葉樹林帯の手前の小峠という少し開けた地点です。日も射してきました。標高が1672m。この先は深い針葉樹の森が続きます。針葉樹も気になるのですが、このあたりには見たことのない野草の花が多く咲いていたのでした。考えてみれば、草原や高山の花は良く見に行っていたのですが、こういう亜高山帯の森はこれまであまり興味もなく通り過ぎていただけでした。よく見るといろいろ咲いていました。 
9) れは初めて見る花です。ワチガイソウです。ナデシコ科ワチガイ属。関東以南、九州の山地に分布。県によっては絶滅危惧種に指定されていると言います。拡大してみますね。 
10) ワチガイソウの花。雄しべがいい感じですね。ヒゲネワチガイソウとかクシロワチガイソウとかワダソウとかの近縁種もあるようですが、ワチガイソウで間違いなさそうです。(2022/7/4)  →ワチガイソウ
11)同じ場所で、特徴のある花を見つけました。これも見たことがない花です。
12)これは繊細というか上品というか、花がかなり落ちてしまっていたのが残念ですが、長い茎を放射状に出して、そのてっぺんだけに花が付いています。そして地面から茎が1本だけ出ていました。こんな特徴的な花は他にはなく、イワセントウソウというそうです。セリ科イワセントウソウ属。漢字で書くと岩仙洞草。深山に咲く花とのことで、いかにもそれっぽ雨名前ですね。(2022/7/5)→イワセントウソウ
13) 切込湖の亜高山針葉樹林内で最も多くみかけたのがこの花です。この花も初めて見るのですが、この葉の形は見覚えがあります。なんだったっけ。そうそうカタバミの葉にそっくりです。ただしカタバミは黄色い花。これは、深山の針葉樹林内に生えるコミヤマカタバミのようです。カタバミの仲間なので葉が同じなんですね、しかし花の色が全然違います。 
14) コミヤマカタバミの花。あとで撮った写真を確認してみたら、意外にあまり写していないんですね。この亜高山針葉樹林内のあちこちでみかけたので、なんとなく珍しくもない花だと思い込んでしまったのかもしれません。しかしどうもこの花は庭で育てるのは困難とのことで、その意味で貴重といってよいかもしれません。この花は、紫色の線がかななり目立ちますが、これが薄いのもありました。また、真ん中が黄色いのがこの花の大きな特徴とのことです。美しい色合いです。(2022/7/7)→コミヤマカタバミ
15) 切込湖の亜高山針葉樹林内の野草の花に時間を費やしてしまいましたが、何と言っても素晴らしかったのは、森そのものでした。これは森の奥深く。このあたりはほとんどがコメツガのようでした。コメロツガといえば、高山の岩場の低木のものはよく見かけるのですが、ここはほぼ純林を形成しているようでした。高さは20mぐらいはありそうです。 
16) そして、コメツガ林を抜けていくと切込湖が飛び込んできます。先客がいらっしゃいました。絵になりますね。標高はだいたい1600m。次回はコメツガをはじめとした亜高山帯の針葉樹を個別に紹介する予定。(2022/7/8)

17)亜高山帯の針葉樹、コメツガを紹介ます。コメツガは亜高山帯で普通に見られ、特に森林限界付近では低木状になっているので、登山しているとハイマツとともになじみのある樹です。しかし、こんなに立派な純林を形成するとは知りませんでした。20メートル近い高木ばかりです。このあたりは、コメツガの純林が拡がっていて保全地区になっており、立ち入り禁止の区域もありました。 
18)19)コメツガの葉です。モミやカヤに似ていますが、短くて先が尖っていないのが特徴でしょうか。この写真ではわかりませんが、枝に毛が生えているのが識別ポイントだと言います。マツ科ですからまつぼっくりが生るのですが、まだ早い。また、見つけに来ることにしたいです。(2022/7/9)→コメツガ
20)切込湖の亜高山帯のコメツガ林の手前、少し標高の低い地点に広がっていた森です。一見、スギ、ヒノキの人工林にそっくりです。人工林は密度を高く植林するので、成長する前に間伐をしないと、森が暗くなり荒れた森になってしまいます。それにそっくりにみえたのですが、下層植生はしっかりあるし樹の太さもバラバラで人工林ではなさそうです。自然の状態でも針葉樹の森ってこんな感じなのかと感心したのですが、ではこれらは何の樹なのでしょうか。 
21) あれあれ、これはヒノキの葉にそっくりです。ヒノキはこのあたりには自生していないと聞いていたので、やはり人工林なのでしょうか。 
22) 葉の裏は、明らかにヒノキとは違います。これはアスナロです。"明日"、ヒノキに"なろ"うということでこの名があると言いますが、牧野富太郎によると俗説とのこと。アスナロは、亜高山帯に限らず低地にも良く育つようですが、このあたりの亜高山帯に比較的多くみられました。(2022/7/10)→アスナロ
23)-25)この日の目的地の切込湖を改めて紹介します。火山の溶岩が沢をせき止めた湖で、奥日光には多くの湖がありますが、その中でも高くて奥にあり、2時間以上は歩いてしか行けないので、人影もまばらでたいへん静かな時を過ごすことが出来ました。 
26) 切込湖は、標高は1600m。亜高山帯の豊かな森に囲まれているのが特徴でしょうか。野鳥の塒になっているらしく、大砲レンズを抱えたバードウォーッチャーが何人もいらっしゃいました。コメツガが多い森の林床には、先に紹介したコミヤマカタバミが咲き、そして。。。 
27) 湖畔にとまっていたのが、キベリタテハです。北海道と本州の中部地方以北、本州では標高1500~2000mに生息する蝶です。広葉樹林帯か亜高山帯ではダケカンバ林に多いと言います。たしかに、すぐ近くにはダケカンバ林がありました。(2022/7/12)→キベリタテハ
28)29)切込湖を去って森の中は入ってしばらく行くは急に開けた場所に出ます。涸沼といい、水がない沼。ずっと森が続いていましたので、ほーっと感嘆したものでした。ここは、草原ですので野草の花がかつては咲き乱れていたとのことですが、ほとんど咲いていませんでした。シカのせいだといいます。確かに、前日の霧降高原も、翌日の戦場ヶ原も厳重にシカ柵が張り巡らせていて、シカの侵入を防いでいましたので、相当の被害なのでしょう。私の注目したのは、広い草原に育っている樹は何かということです。みんな同じ樹のようです。 
30)涸沼は立ち入り禁止になっていたので、近づきませんでしたが、近くに同じ樹がありました。これは、カラマツです。針葉樹にしては珍しい落葉樹。カラマツソウの時に紹介しました。この樹は、山火事とか崩壊地に、真っ先に侵入する樹ということです。長野県あたりでは植林も多いようです。
31)カラマツの葉です。落葉樹ということで、紅葉もきれいといいます。(2022/7/13)→カラマツ
32) 行ってから1か月になり、どうしようかと思いましたが、続けたいと思います。一昨日の鬼怒沼は雨もあり大した写真を撮れなかったし。で、鬼怒沼の亜高山帯の森林で写真は撮らなかったのですが、気になったのがコケです。一時、近くの森でコケを調べてみようと思ったのですが、結局大して生えていなかったので、やめてしまったのですが、コケだらけだったんです。そこで切込湖の森で写したコケを思い出し、紹介するものです。じつはこれは大きくてコケとは思わなかったんですね。しかしどうやらセイタカスギゴケというスギゴケ科で最大のコケのようです。20cm以上になるというけど、これもそのくらいはあるかも。 
33) セイタカスギゴケを上から撮ったもの。左のコミヤマカタバミの葉と比べると、その大きさが分かるでしょう。カラマツの葉にも似ていますね。亜高山帯針葉樹林帯の明るい林床で、普通に見られるといいます。目立ちますよね。もちろん、鬼怒沼の森にもありました。コケも注目していきたいです。(2022/7/18)
34) 1週間ばかりサボってしまった。次の山旅計画が難航したことが大きいかな。コロナも気になるし、天気も不順だし悩むところだが、家にいても蒸し暑いばかりなので決行に決めました。山旅日記は、新たな花や樹の写真を記録することで、自分の中で整理になるので(読書記録も同じ←こちらも書けてないが)、時間がかかっているが続けたいと思います。日光の続き。1か月以上も前の話になってしまった。切込湖。このコースは最後にかなりの登りがあって、ここがきついのですが、この日の最高高度1730mの山王峠のすぐ先、ダケカンバの森が急に開けます。この急に、というのが印象を鮮やかにしてくれます。左の方の樹に白い花が咲いています。 
35)この時だけは良い天気でした。青空に映えるこの樹はズミ。リンゴの仲間です。 
36)ズミの花。ちょうど満開でした。翌日の戦場ヶ原にもズミは多くて、見ごろと聞いていたのですが、すでに花は終わっていました。戦場ヶ原のほうが、標高が低い(1300m)のでそのせいでしょうか。この時は、明日たくさん見ることが出来るからなあ、と思っていたのですが、これが見納めになったのでした。 
37)これは、別のズミ。涸沼に咲いていたもの。まだ蕾が開きかけです。ズミの蕾は赤いんですね。涸沼の方が、山王峠より標高は低い(1600m)ので、暖かいはずですが、涸沼付近はすり鉢状になっていて、下の方に冷気がたまって、紅葉は下から色づき始めると言います。ズミの開花の差がどこまで気温差で説明できるかはわかりませんが、そんなことを考えるのも楽しいものです。(2022/7/28)→ズミ
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